第10章 琥珀色の闇*
今朝から気温が低く、窓を閉めていても冷たげな秋風がガラスを震わせている。
土曜にも関わらず、静は仕事に出かけて行った。
とはいえ、平日は透子の方もする事はわりとあった。
仕事の準備が遅れていたのはもちろん、食事や服装のマナーなどについても目を通しておいた。
加えて三田村や桜木などとジムで軽く体を動したり、美和からストレス軽減のマッサージやストレッチなどを教わったりで、日々が楽しく過ぎて行った。
「お出掛け、デスか?」
「はい。 身の回りの物で、少し必要なのもありまして。 外出してももう大丈夫でしょうか?」
部屋のシーツを取り替えに来た美和を手伝いながら訊いてみた。
「それ自体はほぼ大丈夫なんですケドお。 青木様、どうシマしょ?」
「静様の許可をいただいておりませんので、ええ。 透子様、静様の会議が終わる夕方まで、お待ちいただけませんでしょうか」
同様に昼食の食器を下げに来ていた青木が、静のスケジュールらしきものを眺め伝えてくる。
「私の外出に許可が必要なんですか?」
「当面はそのように仰せつかっております」
「そんな、私何も聞いてません。 それに子供でもないんですから」
透子にしては珍しく、反論を口にした。
そもそも静は自由な時間が無さすぎて、話すのも儘ならないというのに。