第2章 誰より優しく奪う*
「鈍いかと思うと妙な所で頭が回る……」
心無しか引きつった顔をしていた静がほうと息をつき、今度は落ち着いた声を落とした。
「白井透子。 そう急ぐな。 こちらはキミに訊きたいことがある」
「なんなんですか」
「まあ、茶ぐらい飲んでいっても構わんだろう。 そこに掛けたまえよ」
指されたソファの端にそろそろとお尻を乗せ、透子が向かい側に座る静の様子を油断なく観察した。
長い長い手足、の割に小顔。
それさえも最早ムカつく。
つんとして他人を小馬鹿にする態度はこの人の癖なんだろうか。
それからまたどうでもいいけど、この若さで三つ揃いのスーツなんて着てる人を始めて見た。
「少しばかりキミのことを調べた。 来月は誕生日だそうだな。 たしかにその地味な紺色のワンピースに青紫の輝石のネックレスなどは似合うと思うが」
「? そうなんですか」
誕生日とワンピースと青紫?
静の話してる意味が図りかねた。
「欲しいのなら買ってやらないこともない」
「なんの理由で? 結構です」
また口許を引きつらせた静は微妙な顔をしていた。
「……かわいくない」