第9章 讃えられる寂しさ
そこから口調を変えた西条が椅子の上で脚を崩し、おどけたように静に向き直る。
「しっかし、派手にやったんでしょ? 白井家は大丈夫なの? 倒産で一家離散なんて事態になったら」
「そこまでは面倒見切れないし、ただの自業自得だろう。 先ほどの事も思えば良かったか。 ま、父親に借りを作らずに済んだな」
「あの。 静さんにその事で相談したく。 もう少し、なんというか。 穏便に考えてもらう事はできませんか?」
「穏便に? 俺はあるべき姿に戻しただけだぞ」
「それは分かるんですけど」
一瞬ムッとしかけた静が、ふと透子に視線を送る。
「もしや、義父というか…あの叔父の事を気にしているのか?」
「それもあります」
それからテーブルの端にもたれ掛かっていた静が若干声を落とした。
「キミに言う事じゃないから黙っていたが、あの男には長年の愛人がいる」
「………」
「あの義母ではそうなるのも仕様がないかもしれないが、ひょっとして叔父の方が先だったのかも知れん。 だがどちらにしろ、あの男は逃げていただけだ。 同情の余地はない」
「それでも………いえ、自業自得などは関係なく。 無駄に敵を作る必要はないのではと思ったんです」
静が眉をひそめた。
「どういうことだ」
「静さんは以前に『敵が多い』と言っていましたが。 ああいうやり方では、やはりそうなるだろうなと私も思います」
「白井さん。 それは事業をやってる以上は仕方ない。 逆に言うと、明日は我が身なんだしさ」