第9章 讃えられる寂しさ
「そうなんですけど………我が身のリスクは、なるべく下げた方がいいですよね?」
「何が言いたい? 考えがあるなら言ってみろ」
「はい。 沙希さんを大学院卒業後、八神さんの会社に入れてあげてはいかがですか」
透子の提案に、静と西条が顔を見合わせる。
「は………? あの馬鹿娘をか」
「沙希さんはたぶん、馬鹿娘ではないです。 叔父さんが会社の事を沙希さんに全く伝えなかったのは、なんというか、恣意的なものを感じて。 それに、あの場で会社の先行きを一番心配していたのは沙希さんのような気がします」
『ねえ、何を好き好んでこんな家に来たの?』
沙希は確かそう言っていた。
もしかして沙希は、叔父の不義も知っていたのではないかとも透子は思う。
「恣意的………ね。 まあ、元は嫁の白井の物だしな。 自分の代で潰そうが、叔父からすると全く構わんのだろうが」
そして帰り際に何者とも戦わず、その場を治めるためだけに家族を庇った叔父を、静は蔑んだのだろうか。
「それで、その娘とやらを静の会社に入れてどうするの? 白井家の会社をそれで盛り立てるとなると、ある程度のポストがいるよね。 というか、他企業に勤めたんなら、私情でそんな事は出来ないし」
「そこまでは必要なく。 どうせ叔父の代で終わるのでしたら、沙希さんの行く先を決めてあげたら、皆安心するかなあと思ったんですけど………」
透子の向こうに目を泳がせた静が顎に指をあてて考える。