第9章 讃えられる寂しさ
「────つまり、貴女の主張をまとめるとこうなのですね」
一階の来客室にて。
大きめの応接室を思わせる室内では、その女性と青木が対面で向かい合っている。
透子と各従業員は脇のソファに並び、困惑顔で彼らを遠巻きに見守っていた。
男の子はお腹が空いていたのか、出されたクッキーなどのお菓子をガツガツ口に運んでいる。
勢いよく音を立ててストローを吸い込む様子に、青木がほんの少し眉をひそめた。
「貴女は米国人で、ある男性と………ええ。 ゴホン。 関係を持ち、その結果、妊娠して出来た子がその子供、と。 相手の男性は日本国籍で、八神と名乗ったに間違いございませんね?」
「しかし、それだけでは本人とは分からないのでは」
「丸井物産ってトコはアンタんとこの会社だろう? いいスーツ着たデカいリムジンで、部下らしい人と話してたんだ」
「DNA鑑定なら、うちの大学病院で二日で結果が出マスよお。 然るべき手順ガン無視で」
上から青木、三田村、その女性、美和の会話である。
「とはいえ、間違いないでしょうねえ。 男の子の目元なんかホラ、そっくりですもの」
「本当に………困ったものです」
桜木とまた青木がため息をついて目を伏せる。
透子にはその子と静が似ているのかどうかは分からなかった。
ブラウンの髪に瞳の色。
顔立ちが整っているのとハーフなのは間違いないにしても。
「その子と…お二人で日本に来られたのですか」