第9章 讃えられる寂しさ
****
午後になって桜木が、白井の家で取り上げられていた透子の持ち物を届けに来てくれた。
「今回は本当にありがとうございました」
美和や青木を始め、透子は世話になった一人一人に深深と頭を下げて回った。
青木は『さて、何のことでしょう。 わたくしは執務をしていただけです』などととぼけてみせ、桜木はふんわりと綺麗な笑顔を返してくれた。『透子様は何事にも我慢が過ぎるのです』と、三田村にはちょっと怒られてしまった。
静の部屋に戻り、自分のPCを久しぶりに開き、早速西条へと連絡をとってみた。
『ここの所、返信が無かった事情は聞いてるよ。 午後に静とそちらに訪ねるから』
なるほど来客とは、西条のことだったらしい。
それならばと、クローゼットを開けてなるべくキチンとみえる服を選ぶことにした。
「───────!!」
「────この野郎────!」
ふと。 なにやら、外が騒がしい。
窓を開けて外庭を覗くと、庭を挟んだ門の辺りに見知らぬ女性の姿が見える。
青木と三田村の姿も。
「ちょっと貴女、少し落ち着いてください」
「八神を出せよ! この子が証拠なんだから。 調べりゃ分かる事さ。 検査でも何でもすればいいだろう!?」
訛りとスラングで聞き取りづらいが、英語だ。
多少身なりが派手でグラマーかつ綺麗な人だった。
推定二十代の、その金髪の女性が腕に抱いているのは三歳ぐらいの男の子。
「ええと………?」
頭がついてこない。
ついてくるのを嫌がっているという方が正しいかもしれない。