第8章 満天の夜に
ありがとうの言葉は軽すぎて、気持ちを詳しく伝えようとすると今の自分は多分泣いてしまう。
それは落ち着いてから後から改めて、と。 気持ちを切り替えて辺りを見回す。
「大変にご迷惑をお掛けしました。 すみません、そういえば………三田村さんは?」
「操縦席ですわ。 あの人には、みっちみちに仕事を与えておかないと。 隙をみて怒鳴り込みにでも行きそうな勢いでしたから」
真面目で正義感の強いそんな彼女の様子は何となく、想像出来た。
向かい側に居る静がポツンと取り残されたようなていで不満を漏らしてくる。
「どうでもいいがキミたち、いい加減に透子を返したまえ」
「あら、そうですね。 どうしても透子様には、母性本能がダダ漏れしてしまうようで」
「透子様は小さくて真っ白で、小動物っぽい可愛らしさがありマスから。 オキシトシンのなせる技デスねえ」
透子の前後に座っていた桜木と美和がそれに気付き、ふふと笑い合った。
業を煮やしたのか静がベリ、と二人から透子を引き剥がし、無言で自分の膝の上に乗せる。
体に毛布を巻き付けられた透子が困ったように顔を赤らめた。
「静さん。 すみませんが、私はあまり人前でこういうのは」
「暖めているだけだ。 ああ、そうだ」
彼女ごと体を後ろに向けた静が、機体の大きな窓を覆っていたカーテンを左右に開ける。
「わ……あっ!!」
自分の目の前や眼下一面に広がる、星のような光の群れに透子が歓声をあげた。