第8章 満天の夜に
「数日は安静にして充分な睡眠と、暖かく消化の良いものを。 青木様にお願いしておきマス。 激しいセックスも二日は控えてくだサイねえ」
「負担のないやり方なら任せなさい」
頷きを返す静に、桜木と透子が冷ややかな視線を向ける。
「帰ったら頬の傷を詳しく診て点滴をしマス。 お風呂の温度も少し下げますから」
聴診器を外し、ふう、と息を吐いた美和が透子の手を握る。
「とっても心配しまシタ。 あの時に透子様をお帰ししたことを皆で悔やんで」
と、背後から毛布をフワリと掛けられ、そのまま桜木が透子を抱きしめた。
「本当に。 実はとっととお迎えに行こうとしたのですわ。 けれど青木様と………意外にも静様が止めて」
「あの娘があんなに馬鹿だとは思っていなかったからな。 仮にも跡取りなのだから、もう少し内情を理解しているのかと。 見誤ったのは俺の非だ。 キッチリ締めておかないと、また同じ事を繰り返す」
「お可哀想に。 今までずっと囚われていたのでしょう」
「あ、いえ。 確かに色々手元にはありませんでしたが、閉じ込められていた訳ではなく、私が勝手に」
「桜木が言っているのはそういう意味ではない」
桜木たちも、静と同じく事情を知っているんだろう。 だが彼女たちに対し、透子はどういう反応をすればいいのか分からなかった。
「………」