第8章 満天の夜に
「それでも、お前の残りの学費ぐらいは出せる………あとは正当に細々と事業をやっていけばいい。 八神さん、どうか」
両手をついて二人の前に平伏する叔父を見下ろし、静が不快そうに顔をしかめる。
「それが母娘を守る父の姿か。 情けない。 潰す気も失せるわ」
悪代官………もとい静がポン、と封筒を透子に押し付け彼女の手を引く。
「透子、行くぞ」
封筒の中からは、チャリ、と金属音がした。
その重さや形状で、透子にはそれが何かがすぐに理解できた。
透子が静に少し立ち止まってもらうよう、目で合図を送る。
「────お世話に、なりました」
そして室内の皆に向かって一礼した透子は、白井の家に別れを告げた。