第8章 満天の夜に
反動でよろめいた咲希が、あ然として顔を抑えた。
「咲希ちゃん!!」
そんな咲希に義母が弾かれたように叫び駆け寄った。
「女を殴るなんて。 などとつまらない事は言ってくれるなよ? 診断書の件はフイになったかな。 まあ些事だし、良いだろう」
と、スーツの内側のポケットからハンカチを取り出した静がこれ見よがしに自らの手を拭って見せる。
「ふう、手が汚れてしまった。 こんな時は青木が居ないと不便だな」
静さん、いくら何でもやり過ぎです。
沙希が包丁でも持ってきそうな形相になっている。 透子はハラハラしてそんな彼らを見ていた。
「咲希ちゃん、大丈夫!?」
「────だ、大丈夫なわけ、ないでしょう!! 大体! ママが悪いのよ!! 養女なんて、この家に入れるから」
「そん…な………でも、透子さん…そうよ。 咲希ちゃんの言う通りね。 私が間違っていたわ」
癇癪を起こす咲希をなだめる義母。
ここで嫌という程見てきた光景だ。
義母は情の深い人だと聞いていた。
きっとそれは、咲希のために使い果たしているんだろう。 そんなことを存外、冷静な気持ちで考えていた透子に、静はうんざりした目を向けてくる。
「………見るに耐えん。 透子、そろそろ」
「透子さん。 貴女が…貴女さえいなければ、最初っから………そうよ。 私の姉も死なずに済んだのに!!」
義母の攻撃が透子に向かい、罵倒を浴びせた。
透子の足がすくんだ。