第8章 満天の夜に
「あ、ああ………実は、八神さんの言う通りだ。 それに他が手を出さないよう助けてくれていたのは」
「俺の父親、だな?」
ぎこちなく叔父が頷いた。
「父親とそちらの祖父。 親しかったようだが片方が亡くなり、今は何のしらがみもない。 そろそろ世代交代してもらわないとな。 うちは製品の外部公開を促すと共に、取引先をいただいた」
段々と表情が硬くなっていく沙希を静が鼻で笑う。
「ここまで言ってやっと事態が呑み込めたか?」
………またそんな煽りまくるような言い方を。
なんでだろう。 最初に見た時はまだ王子様風に輝いていた静が、今はまるで悪代官にしか見えない。 と、透子が呆れる。
それでも。
「明日にでもそちらに人を寄越すから、首を洗って待ってるといい………と、白井咲希」
今まで静はずっと透子の手を握っていた。
そのせいか、この家にいるというのに、透子の心から気おくれや不安はほとんどなかった。
「俺は気が強い女は個人的には嫌いでは無い。 見た目もまあまあかな。 ゴテゴテ飾り付け過ぎだが」
少しばかり腰を屈めた静が、ジロジロ無遠慮に沙希を観察する。
「だが残念、俺はお前では勃たない。 いい加減に、小賢しいだけのみっともない真似は止めたらどうだ?」
「だっ………れが、アンタなんか…っ!!」
咲希の顔色がみるみるうちに変わり、静に向け、片手をあげて振りかぶった。
が、その前にバチン!!と彼が咲希の頬を引っぱたく。
「………っ!??」