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琥珀王子と瑠璃色灰かぶり姫

第8章 満天の夜に



そういえば、叔父の会社は医療用具のパーツなどを作っている。
祖父が制作から流通まで、一代で築き上げたという。
それでなぜ沙希が得意げなのかは、透子には分わらないが。

「ふむ………そんなもの、そもそもがだ。 うちにとって大した利益はなかった」

静がしらっと答えるも、沙希に動じる様子はない。

「うちに競合相手は居ない。 こっちが持っている顧客とはそちらとも付き合いがあるでしょう? 関係が悪くなると、そっちが困るはず」

「軽慮浅謀とはこの事か………輸出してる先は中国、そこで加工され主に使ってる先は欧州。 ほぼ欧州で育った俺がだ。 中国側に圧力をかけるのは容易いこと。 それをうちは看過してきたに過ぎない。 親同士の情という、古臭い条約の元に」

沙希がいまいち的を得ない反応を返した。

「パパ? うちには正式な特許の権利があるのよね」

「そ………それは」

「フン。 透子。 知的財産に対して恩恵を受けることの出来る、特許期間とはいつまでか知っているか」

言い淀む叔父とそれを怪訝に見る沙希を見下ろした静が、突然透子に話を振った。
特許権とは。 と、透子が思い出そうとする。

ある特許を受けた物やなにかを、一定期間独り占め出来ることを指す。

「ええと………発明などの…でしたら、法律では確か二十年、でしたっけ」

「うむその通りだ。 とうに特権を得る期限は過ぎている」

この家族の中では唯一話が通じているらしい叔父だけが、しきりに額の汗を拭っていた。



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