第7章 閑話 百花繚乱*
「ああ、本題が遅くなりました。 透子様、お心は落ち着きましたか?」
「え………?」
一瞬、苦い表情をした三田村がすっきりとした造りの顔に憎悪を滲ませ透子に言う。
ちなみに三田村は細身のパンツタイプのスーツを身を包んでいる。
モデルのようなスタイルに、これもまた惚れ惚れする。
「今朝のお話を聞いて新人の身ながら、居ても経ってもいられなく。 私は中学生の時に、暴行された経験があります。 先ほど泣かれていた時の透子様のお気持ちはそれと同じですよね? 恐怖と嫌悪に………恥辱、それから、自尊心が踏みにじられる────たとえ夫婦間であれ恋人であれ、無理矢理の行為はDVなのですよ」
「アメリカでも睡眠姦は、準強制性交等罪としてたびたび犯罪問題として取り上げられてマス。 私も数え切れない程、似たような目に合いまシタし」
「それについては、あの…本人にもさっき伝えたんです。 たしかに驚きはしましたが………でも、私はそこまで」
「透子様」
向かい側の桜木がやんわりと透子を遮り、花の香りがするお茶のカップをソーサーに置く。
「涙の理由を放っておいてはなりません。 救ってあげられるのは、結局は御自身しか居ないのですから────ましてや、あの静様のこと。 心からの謝罪を受けていないのでしょう?」
「しかし謝罪よりも切腹を選ぶというのも、またブシドーに通づるモノはありますヨネ」
コロコロ笑う美和に再び桜木の圧のこもった笑みが向けられ、美和がサッと自らの背後に顔を逸らす。