第7章 閑話 百花繚乱*
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こんなことをしてる場合では。
昼前のうららかな陽ざしが、国立よりは狭くも洗練された庭花を照らす。
「すみませんが、私は早く静さんを止めに行かないと」
それに負けじとたおやかな風情で透子に目を向けているこの三人は全員、ここの従業員だという。
タイプは違えどもどの女性も美女といえるだろう。
庭の裏手にある屋外の瀟洒な石造りの丸テーブルの上には、お茶やクッキーやケーキといったお菓子類が所狭しと並んでいた。
「まあまあ。 あの方は一度や二度三度、生死の境を彷徨えば良いのですわ。 あ、私は五年ほどここに勤めてまして。 桜木と申します」
「レイプ魔など雇い主とはいえ、生かしてはおけません。 元よりそんな主人に仕える気はありませんし」
どうやら静を言葉で刺した犯人は三田村らしい。
殺気のこもった目で空を見詰めている。
「でもお、そしたらお給料が出なくなっちゃいマスよ? 大体、切腹って、介錯役が居ないとなかなか厄介なんデス。 こう、この辺りにぐっと深く刺して、肝臓と脾臓を横に割いて戴くのが、一番こちらとしても楽」
と、また青い顔をしてソワソワし始める透子を見、桜木が柔らかな笑顔で遮った。
「美和さん。 今はお茶の席なのですから、ね?」
たしか、美和という女性は救急班の一人だったはずだ。
昨日チラッと目にしたような気がする、と透子が思った。
いかにもなフリルで縁取られたメイド服が似合う。
「美和さんは看護師の方ですか?」
とすると、自分に一番歳が近いのだろうか。
体型的にも小柄で、親近感を持った透子が訊いてみた。