第7章 閑話 百花繚乱*
その背中を見送っていた青木と透子の二人が顔を見合わせる。
「お………大げさ…?」
「いえ。 静様は大変に自尊心の強いお方です────それに相応しく自らにも厳しい。 表向きはイギリス紳士でありながらも、心は武士なのです」
そう言いながら、青木が両手を揃えて指し示す方向を見ると、書棚の一角にギッシリと詰まった歴史物の書物と、黒く塗られた刀掛けとでもいうのだろうか。
「おや? 銘刀清光が一本足りないようで」
「静さーんっっ!?」
透子が椅子から立ち上がって叫び、慌てて静の後を追って部屋を飛び出した。
日本史オタクだったのか………あのボンボンはもうホントに、手のかかる。
と、自分を棚に置いて心中で愚痴を吐きながら、階段の踊り場に差し掛かった透子が眼下のホールに視線を向ける。
「透子様。 お待ちしておりました」
────複数の女性の声が透子を呼び、華やかな一団が笑顔で彼女を見上げていた。