第7章 閑話 百花繚乱*
いい歳をして他人の前で泣いてしまい、恥ずかしい思いをした。
青木の気遣いのお陰で、なんとか元気を取り戻し朝食に手を付けていた頃に。
静が部屋に戻って来た。
が、やたらに暗い顔をして沈んでいる。
そしてフラっとよろめいた後に力なく長椅子へと体を預けた。
「し、静さん………? なんか生気が」
「叫ぶ気力もないムンクといったていですかね………」
それだ。 ナイス描写とぐっと親指を立てたくなった透子の羨望の眼差しに、青木は頬の上をほんのり染めた。
はにかんでる、はにかんでる。
国立の青木さんも、今度じっくりと観察してみたいところだ。
「………この俺はどうやら、レイプ魔だそうだ」
「レ?」
魂の抜けたようにポソリと呟いた静が、またフラフラと歩き出す。
「静さん。 たしかにさっきは驚きましたけど………私、そこまでは」
「そんな汚名を着せられて生き延びるぐらいなら、俺は切腹でもした方がましだ────風呂に入って身を清めてくる」
閉まってるドアにゴンと頭をぶつけ、数秒固まってからそれを開けて、よろけながら出て行こうとする。
「静様。 その前に朝食を。 またのぼせてしまいます」
「大事ない………」
青木の制止もきかず小さく言った静の姿が見えなくなった。