第6章 針
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静や西条に連絡をしなければ。
ふとそう思い付くも、その手立てが無いことに気付く。
どこかに迷い込んだ夢をみてるみたいだ。
翌日になり、また昨日と同じに日が暮れていく。
椅子に腰をかけただそんなことを繰り返していた。
外が暗くなり冷えた風が吹き込んできても、透子はその場にじっと佇んでいた。
『お前は一体誰なんだ?』
静に訊かれてから考えるようになった。
住む場所が変わり。
他の家に属し。
それでもやるべき事があるのでは無いかと。
自分がこの家に閉じこもって周囲の言いなりになることは、きっと誰のためにもならない。
事実、ここの家族にとって自分は邪魔だったはずだ。
厄介払い出来た方が気兼ねなく暮らすことが出来るだろうに。
この夜空と同じく、瑠璃色が細く囲う指を見るたびに思う。
────会いたい、と。