第6章 針
………周囲から、なにやら微笑ましくも生暖かい、むずがゆい視線を感じる。
来た時と同じく、しかも今度はご丁寧にも跪いている静に、透子が手を握り返しブンブンそれを振り回した。
「…あっ! ああ、ありがとうございます!」
「キミはもう少」
無粋な、とでも言いたげな静の眉の間に皺が寄る。
「っ!! それでは!」
ドアを閉め、発車し始めたエンジン音に透子がホッとして、背もたれに体を預けた。
静の気持ちはとても嬉しいのだけど。 なんというかもう少し、人前ということを考慮していただけないだろうか。
火照った顔を冷ますため、透子が頬を手のひらで覆った。