第6章 針
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────それから諸々あり。
午後になって、静をはじめ目黒邸の人たちが見送る中、透子が送りの車に乗った。
「俺も同行したいが、これから仕事がある。 先方には連絡をしておくから、また明後日に」
「送っていただけるだけで十分です。 皆さんにも、こんなによくしていただいて。 大変お世話になりました」
家の一切を取り仕切る青木。 それから給仕や清掃を兼ねる女性が三人。
内訳は救急班といわれるお抱えの医師が一人(もう一人は募集中)。
SP役を務める者が二人。 新人の三田村は後者に含まれる。
調理の人は通いで来ているというので、実際に自分は、この四人と静とで暮らすことになるのだろう。
午前中のバタバタのおかげでほぼ全員と顔合わせをしたが、いずれも優秀で素敵な女性ばかりだった。
「私たちは週末にお手伝いに参りますから。 透子様が来られるのを心待ちにしております」
もっと仲良くなったら、年下の自分への敬語を止めてくれるだろうか。 彼女らとニコニコ笑顔で見詰め合う透子を見、静がやや面白くなさそうな顔をした。
「では、私はこれで」
「透子」
前に進み出た静が手を取ってくる。
彼の、陽に透けて魅惑的な色彩の瞳が、真っすぐ透子に向けられる。
「いつもキミのことを見ているから」