第6章 針
自分は関係のない人間に心配をかけている? ぴた、と透子の涙が止まった。
「静さん、は?」
おず……と、顔をあげかける透子に、青木が細い目を下げてグラスへとビタミンカラーの飲み物を注ぐ。
「しばしの間、室を出ていただきました。 フレッシュジュースが絞りたてでございますよ」
幼げに泣き腫らした目で、だが不自然なほどに取り繕うのがかえって自然にでもなっているような。
「はい、すみません。 ありがとうございます」
静を幼少時から見ていた青木は、自分ら兄弟が用意した、数えきれない彼女に対する調書とともに────なぜ静が白井透子という女性に惹かれたのかを理解した。