• テキストサイズ

琥珀王子と瑠璃色灰かぶり姫

第6章 針




「失礼します」といつものように断りを入れ、青木と女給士が二人、室内に入ってきた。

「透子、抱きしめたら落ち着くか?」

ブンブンと首を横に振られたので、静が顔を伏せたままの彼女をとりあえずシーツでくるむ。 その際に、ビクッと怯えたように透子の体が強ばった。

困惑して窓際に進み腕を組む静と、膝を抱えたままの透子を見、青木と女給仕が視線を交わす。

「………静様。 透子様が食しやすいよう配膳を整えますので。 恐れながら少しばかり、廊下の方へ」

「は? なぜわざわざ」

静が戸口の方へ目をやると、女給仕がそこで軽く頭を下げていた。

『三田村さんは良い人です!』

透子がたしかそう言っていた、そして彼女と同じく、まだここに慣れていない────あの背の高い方がそうだな。 と静が思い付き、ふう、と息をついて廊下に出、音を立てずにドアを閉めた。


「透子様。 お体のため、なにかお口に」

シャッと音がし、窓際からより明るい気配がした。
庭に面した窓には分厚いカーテンが中途半端に引かれていたが、秋の朝の日差しはことのほか強いらしい。

その後透子の隣で、青木がカチャカチャ食事を整えている音がする。

「なんとお声をかけていいのか、分かりかねますが」

ゆっくりと、気遣うような青木の声音だった。

「………静様が他人を同室に泊まらせるのも、以前から女人に対し、あのようになるのも、わたくしは初めて拝見しますゆえ」



/ 457ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp