第6章 針
起き抜けに男性の胸や肩が裸なのを見るのも、なんの前触れもなくそんなことをされるのも。
あと、寝ているうちに?
なんでそんなことが出来るの?
どこまでなにを…私は変じゃなかった?
そんな風に飛び回る、自分の色んな感情を処理し切れない。
両手を口許に覆い、「うっ……」と嗚咽を漏らす透子を見、静がギョッとした。
「え……っあ、おい。 と、透子?」
「ふう……うっぅ────……」
ベッドの隅に寄り、とうとう膝の上に突っ伏し泣き出してしまった透子に、静が焦りにあせった。
「い、嫌だったか? そんなに? キミも気持ち良いかと思って………だって、風呂の時だっていつも」
「────静様。 朝食をお持ちしました」
いつもの青木の声だったが、間髪入れず静が撥ねつけた。
「そんな場合か。 要らん!」
「ですが。 昨晩の夕食も召し上がっておられません」
「要らんと言ってる」
イライラした口調でドアの向こうに居るであろう青木を追い返そうとし、それよりも小さく震えて泣いている透子をどうしようか────触れてなだめていいものかどうか。 静は大いに迷った。
「静様はそうでも。 昨日の透子様は、ほんの少し昼食を口に運ばれただけです。 ジムで運動されたともお聞きしましたし」
昼食時。
慣れないのか緊張していたのか。 どこかうわの空だった彼女を静が思い出した。
「………それを早く言え!」