第6章 針
もっと一日が長ければいいのに、などと思いつき、そんなことをここのところ考えたことがなかった自分に気付いた。
「それで。 なんでさっきは、青木さんたちがいきなり集合してきたんですか」
若干────というか、かなり気になっていたことを静に聞いてみた。
「ふむ。 そもそもだが、俺の周りには敵が多い。 これは分かるな?」
「その性格ですものね」
「そうじゃない。 病人をいちいち抉るのはやめたまえ。 西条なども同様だ。 会社がらみの敵、単なる金目的の強盗、女…いや、まあ、そんな感じでだ」
今、女って聞こえた。 透子が不審な目で静を見、わざとらしく彼が具合が悪そうにゴホゴホ咳払いした。
「昔の話だ────それで、いつも俺の脈拍や血圧、位置情報などを、逐一青木などに伝わるようにしてるわけだ。 今回のは少しばかり違うが………」
静が右手の人差し指にはめているシンプルなデザインのリングをコツ、と指で叩く。
小型の、いわゆるアップルウォッチ的なもの?
お金持ちって大変。 そう思った。
「静様。 お飲み物をお持ちしました」
コンコン、とノックの音がし、「入れ」と言う静の言葉と共に、青木が室内にワゴンを引いてきた。
「透子様にも遅れましたが、午後のお茶をお持ちしました。 本日のご夕食はお部屋に運びましょう」