第9章 きゅう
ベルモットからの案件を終えて本庁に戻った後、書類を整理しいつの間にか寝ていたらしい。
朝日が眩しいくらい入り込んでた。
たしか久しぶりのオフの日だが、オフの日とてやる事は山ほどある。
「ふぁっ」
らしくもなく、だらしなく欠伸と背伸びをした後ネクタイを少し緩めて外へと出た。
朝とはいえ、早い時間だからかまだ人通りも少ない。
横断歩道は赤で仕方なく歩みを止めれば、ぐいっと肩に回る腕。
技でも決めてやろうとおもったが、嗅ぎ慣れたタバコの匂いで眉を寄せるのだけにとどめた。
「よっ」
スルッとその腕から抜け出し、距離を取る。
「外ですけど」
「あぁ、見ての通りな。今終わったのか?」
「まぁ」
「そう嫌な顔すんなよ。俺もやっと書類おわってさぁ、今日オフなんだよ。ちょっと付き合え…の前に」
キョロキョロと視線を動かした後、自分がつけていたサングラスを俺に付けさせる。
「何すんだよ」
「身バレ防止。つけとけよ、それ。ついでに髪もこうすれば…」
せっかく整えてある髪を無造作にぼさぼさにされる。
不本意なんだが…。
誰かに見られたらどうすんだよ、って思いながら腕を引かれる。
まぁだけど、こんな日も悪くないかって思って、抵抗せずついていく。
「車は?」
聞かれながらも、コイツは多分そんなに気にしてないだろうとおもうのは長年の間と、連れてこられた場所のせいだ。
俺が止めた覚えのない、地下駐車場。
せっかく朝だというのに薄暗い。
「駐車場」
答える頃には自分のものではないが、見慣れた車が目の前にある。
「まぁ、乗れ」
強引に助手席へと押し込まれた後、その相手が運転席に乗り込んだのを見て、不満を漏らす。
「車あるんだが」
「言ってたもんな。まぁいいじゃねーか、こまけぇことは。
積もる話もあるんだよ、お前もあるだろ?ゼロ」
「そういうことは萩に聞いてもらえよ、松田」
ハハっと笑ったそいつに仕方なくベルトを閉めた。
「ったく」
「萩原な、最近できたオトモダチに夢中だから、あんま構ってくれねーの」
「おともだち?」
「そーそー、お前知ってる?んと、たしか…松原?原田?んー?
なんて言ったっけな。
ほら、お前のとこのポアロで初めて会ったんだよ」