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夕刻、貴方の影を探す

第8章 はち


 「、容量なんてあっという間になくなっちゃうんだよ。
 そんな溜め込んだら、溢れ出して当然でしょ」
 「なんで、あなたに」
 「俺だから、に言うんだよ!」

 掴まれた肩が痛い。

 「…だって俺、が関わってきた奴らの中で1番歴が短いだろ?」
 「…」
 「ケンジ、いい奴だよな」
 「なんで萩原君が出てくんの」
 「ポアロで会った後仲良くなって、のこと少しだけ聞いたから」

 試すように私言う。

 「…けど、ずっと一緒にいたケンジ達には、言えないことなんだろ?」
 「聞いてなんになるの」
 「のこと、知りたいんだよ。ただそれだけ」
 「知られたくない」
 「それでも知りたいんだよ、」
 「しつこいよ」
 「それでも、知りたいんだ」

 自分でもちょっとどうかしてたんだと思う。
 こんな弱音、もう吐きたくなかったのに。

 私が弱音を吐くたびに、周りが傷つくことちゃんと身をもってわかってたのに。
 ポロポロとメッキが剥がれるみたいに、涙が落ちてく。

 「誰も傷つけたくないの、」
 「誰も、の中に自分は入ってないだろ」
 「当たり前でしょ、私、最低なんだから。もう別にどうなってもいいんだって」
 「何を諦めてんだよ」
 「諦めてない」
 「諦めてるから」
 「…っ!何がわかるの?!
 私は、欲しくないだけ!知りたくないだけ!!」
 「それが諦めてるって言うんだよ」

 八つ当たりだ、こんなの。
 目の前のこの人は、何にも悪くないのに。

 「…ヒロがいなくなった時、死んでたまるかって思ったよ!
 降谷君が泣いた時、私は泣いてやらないって思ったよ!」
 「…」
 「諦めたんじゃない、死なないために、泣かないために捨てたの!
 いらないから、捨てたの!」
 「いらないの?」
 「何にもいらない。ヒロ以外いらない。
 ヒロが守った世界で、何も知らずに生きてる人間が嫌い。
 ヒロはいなくなったのに、危ないことしてる他の同期の人たちは生きてて、普通に生きてて、…そうだよ、だから少しくらい傷つけたって構わな」

 自分に言い聞かせるように、心を落ち着かせるように、そう言葉にする前にグッと口を塞がれる。

 「」

 私を見る、その目は凪いだ海のようで。
 だけど酷く傷ついたように見える。
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