第8章 はち
その笑顔がたとえ別人だとしても、何故かヒロと重なってしまって仕方ない。
「…」
「どうかな?」
色を覚えていたからか、錆かけたその遊具たちを見ながら、例えばブランコの黄色とか、雲梯の赤とか、最近までわからなかった色がまた輝きだす。
よりによって、ヒロとは正反対そうな目の前の男のお陰で、こんなに景色が色づいて見えるなんて。
「………悪趣味」
「嫌だった?」
意地悪みたいに、彼か私自身にかそっと呟いたのを見て心配そうな顔を向けてくる彼。
「大切な思い出、でも、忘れたかったこと思い出しちゃうから。
こんな景色見たくなかった」
ほら、…素直に言えない。
これじゃあ、ヒロだって私に愛想つかすに決まってる。
目の前のこの人だって。
だんだんと、景色が滲んでく。
「…、遊ぼ!」
「え?」
「めいいっぱい遊ぼう!だって、俺たち友達だろ?」
「ともだち?」
「そうそう、子供の時とか遊んだらグッと仲良くなれたりしたでしょ!俺、と仲良くなりたいんだ」
ほら、と、手を引かれる。
「これ、俺好きだったんだよなーっ」
ジャングルジムをまん丸の地球儀みたいにした、回る遊具。
ヒロもこれ、好きだった。
私と降谷君を乗せて、回すのはヒロ。
「、乗って?」
「私はいいよ」
「俺、回すの上手いよ!…あ、でも怖いの?」
少し揶揄うように視線を向けてくるから、悔しくて乗る。
大人になって乗るのは初めてだ。
「怖くない」
「ふっ…、」
チクッ胸が痛む。
「なら、落ちないようにしっかり捕まってて」
谷原さんが、ニヤッと悪戯に笑って駆け出す。
ぐるぐると回りだす世界。
「っ」
「ははっ、やっぱコレ楽しいわ」
とんっと、ちょうどいい具合に回り始めた遊具に飛び乗った彼。
私の隣に乗って、そうやって笑うところも、面影に似すぎていてやっぱりヒロなんじゃないかって錯覚しちゃう。
「は、やっぱり怖かった?」
スピードが緩まってきたタイミングで声を掛けてくる。
「ちょっとだけ、…大人になったからかな?」
「そっか」
谷原さんがぽんっと、降りて自分で回した遊具をそっと止める。
「ねぇ、」
その声に振り向く。