第7章 なな
消毒の匂いに目を覚ます。
真っ白い天井は見慣れない物だった。
「ん…」
掠れた声。
「起きたか!!」
班長の声。
「ど、……して、」
ぽろっとまた涙が出る。
「なんだ?!」
「ど、して、」
迎えにきてくれたって、言ったのに。
しどろもどろする班長、
そうしてるうちに、見慣れた顔ぶれ。
それなのに、やっぱりヒロは居ないの。
「ちゃん!!」
「!!」
「ちょ、おい!降谷まて」
寝転ぶ私の肩を強く掴む。
「!!!なにしてんだよ!!」
降谷君が、怒ってる。
ボロボロと落ちる涙に、もう何も言いたくなくて。
「また…、…てか…れた…っ、」
また、置いてかれた。
たった一言、そう思った。
「ちゃん、」
降谷君はまだ肩を離してくれない。
「諸伏のとこ、行こうとしたの?」
萩原君の問いに、首を振る。
「じゃあどうして、あんなところで!あんな格好で!!」
降谷君の声が耳を刺す。
「おい、ゼロ」
松田君が制す。
そっと、肩から手が離れる。
「…点滴、終わったら1日様子を見て、なんともなかったら帰れるって」
力無く、降谷君が言う。
その間だって涙は止まらない。
「あ、あ、そうだ。俺、看護師さん呼んでくる」
萩原くんに続いたのは松田くん。
「俺、タバコ吸ってくる」
「じゃあ、俺は飲み物でも買ってくる。降谷、あと頼んだぞ」
それに続いた班長が、部屋を出る。
パタンとドアが閉まった。
「…さっきは、悪かった」
先に口を開いたのは降谷くんだった。
喋りたくなくて、自分勝手に反対を向く。
今更ながら、腕には点滴が繋がれてる。
「…風見からきいたよ。が言ってたこと」
「…」
「萩原から鍵も返されたし。ポアロは俺が居ない時出てくれていたようだけど、…僕、キミになにかしたか?」
「…」
「しばらく、避けているようだけど」
全部、気づいてたんだ。
あたりまえか、察しのいい降谷くんじゃなくたって、あからさまな態度とったんだから。
「…、もう、かまわないで」
消えるような声。
「もう、いいから。さきいって、」
「え?」
「しんどい、つかれた」