第7章 なな
ここがどこかもわからなくて、私は泣いてて。
だけど、わかってた。
迷子になってももう見つけてくれる人がいないことも。
もうだいぶ前から、迷子になってたことも。
…いつの間にか、泣き疲れて寝てしまったのかあたりは暗くなってた。
こんなところで寝るなんて、不用心にも程がある。
服には湿った土がこびりついてるに違いない。
少し冷たくておもいから、きっと多分そうだ。
今何時か確認しようにも、携帯の電源を入れてなかったことに気づいて、やめた。
とりあえず、ここから出よう。
フラフラする体をなんとか保たせて、壁に寄りかかりながら立ち上がる。
やっと、表通りに出た頃。
赤い信号機が点滅していて。
それだけで、夜が深いことを知る。
お店もシャッターが閉まってて、それもそうかと思い直す。
トボトボと歩いていると、後ろ手にグイッと腕を引かれる。
また、飛田さんだったらどうしよう。
降谷君に告げ口されてしまう。
思ったよりも体力がなくなっていた私は、その力に対抗することすらできず、そのまま身を任せる。
「こんなところで、何してるの」
…少し息を切らせている。
その声の主がフードを目深に被っていたせいで、生憎顔は見えない。
力強くて、
やさしくて、
「ゆめかな…」
ポロポロっとまた涙が出る。
顔を確認しなくてもわかった。
私はこの温もりを知っていたから。
その声を、知っていたから。
「心配したんだから…って、」
ふっと、力が抜ける。
足にもう力が入らなくて、崩れ落ちた私の体を抱きしめて、離してくれないから。
「むかえに、きてくれたの…」
最後にちゃんと顔見たかったな。
「当たり前でしょ」
「そっか…」
でも、これからは一緒にいられるんだもんね。
ね、
「ひろ…」