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夕刻、貴方の影を探す

第7章 なな


 ポアロも閉店時間を迎えて、梓さんと別れたのはそれから少しした後。

 迎えに来てくれると言っていた松田くんから、連絡はない。
 仕事がまだ終わらないのかもしれない。

 迎えに来るって言ってたけど、服だって着替えたいし。
 一旦家まで帰ろう。

 そう思い歩き出した時、萩原くんからメールが入る。
 歩きスマホにならないよう、少し道を外れて携帯を確認する。

 「《ごめんね、今日行けなくなった。松田やゼロと楽しんで来て》…か」

 いつも1番に来てくれる萩原くんが居ないの、少しだけ不安だな。

 なんて、用事が入ったなら仕方ないのに。

 わかった、

 と、返信してまた歩き出す。

 すっかり日暮れたせいか、街灯が照らした道にはチラホラとしか人がいない。
 その割に車の通りはやや多めだ。

 だから、なんか余計寂しくなった。
 色褪せた街をもう視界に入れるのも嫌になって、俯くのは多分悪い癖。

 やっぱり松田くんに、連絡しようかな…。
 でも、降谷くんも誘われてたし。
 降谷くんがいいかな。

 歩道橋を目前に慣れている道とはいえ、下ばかり見てるのは危ないかとふと思って視線を上げる。

 そのおかげで

 私が渡ろうとしている先で、対向車線側に駐車している車が目に入る。
 街灯にてらされてた。

 見たことのある車だった。

 …なんだ、待っててくれたのか。
 なら、いそいで渡り切らなきゃ。

 少しスピードを上げて、やっと向こう側までついて。
 ここを降り切れば、その車に辿り着くって思った。

 あと、数段降り切ればその車だった。

 そんな時、階段の脇を正面から来た美人な女性が通り過ぎる。
 …外人さんかな。

 当の本人は、私を視界にすら入れてないだろう。

 "綺麗なブロンドの髪"とスタイルの良さが、やけに印象に残る。

 階段を降り切った時、

 「"お待たせ"」

 そんな声が聞こえて思わず隠れてしまったのは、どうしてだろう。

 「いいえ、今日はそんなに待っていませんよ」

 ドアの開く音がした。

 色を含んだような声。
 私の知っているようで、知らない声。

 「お腹すいたわ。いつもの店にしましょう?」
 「仰せのままに」

 声の聞こえる距離で、隠れた私に気づかない2人。
 息を止めた私。

 まもなく、車のドアが閉まる音がした。
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