第6章 ろく
松田が退席した後も尚、観察を続けるためにもそこに長く居座り、ある仮定に確信を持った後でそろそろ帰ろうかと打診する。
「今日、俺も楽しかったからさ。学生とか小学生に出させるわけにはいかないよ。
外で待っててくれ」
なんて、年長者のふりをして近くにいたちゃんに声をかける。
「ちゃん、お会計」
「あぁ、それなら。松田君がみんなの分も済ませてくれたよ、はい。これ、おつり。萩原くんに渡しておいてって言われた」
してやられた。
そういうとこ、あるからなぁ。
「さすがだねぇ、じんぺーちゃん」
「ふふ、うん。私も思った。でも、すっかり意気投合してたね、…谷原さんや昴さんと」
も、気になってるみたいだけどまさかね?
「まぁね、俺、人たらしみたいだし」
「自分で言っちゃうあたり、さすが萩原くんだよ。…あと、ありがとうね。守ろうとしてくれて、」
いじらしく言うから、思わず頭を撫でる。
俺なんかよりも、こうして欲しい相手がいるんだろうけど。
「言ったでしょ、騎士って。これくらいなら、まかされて〜っじゃあ、また来るよ」
それでも俺の勝手な責任感を全うするまでさ、そのまま受け入れてよ。
ドアの先で待ってた3人と合流して、俺は元から谷原に着いていくことにきめていたから、ちょうどよくコナンくん達と別方向に行く谷原についてくことに決めた。
仕事が休みでよかった。
せっかく掴みかけたものを、
気になる仮説を
解き明かせる。
また今度、と別れた2人。
谷原は斜め前を歩く。
なんて声をかけよう。
町の喧騒が聞こえる中の方がいいのか、
はたまた路地裏がいいのか。
「なぁ、ケンジっ」
ばっと振り向いた目の前の男に、俺は身構える。
「どこまでついてくるんだ??」
ただの、大学院生?
そんなわけないだろ。
「俺もちょうどこっちに用があるんだよ」
「ふぅん?」
怪しげに俺を見るそいつに、一か八かかけに出るかいなか。
「それってさ、俺に用?」
首元をいじったそいつが、俺の耳元でいう。
聞き覚えのある、懐かしい声。
…忘れてた。
そういえば、こんな声してたなって。
思わず腕を掴んだ。