第6章 ろく
side 萩
と言う存在は、実に不思議な存在だった。
同期の彼女とは言え、
職種も違う、
住む世界も違う彼女に対し、
それこそ嫌悪感などは無いが、
特に気にかけるほどのことじゃ無いと思っていた。
初めて会った時
彼女は、遠くから見てわかるほどに諸伏を好いていて、
その熱い視線を向けられても尚、
あの涼しいほどのポーカーフェイスを保つ諸伏に俺は少しだけ恐怖すら感じでいた。
あの2人のなんともピュアで、純粋で、儚い関係が俺にはむず痒い。
側から見ると言葉にしない方が煩わしいとさえ、感じた。
だから、
諸伏が気持ちを伝えたと聞いた時、
まるで自分のことのようにはしゃいでしまったのだ。
それなのに、
「え!嘘でしょ!?好きって言っただけ??
好きって言ったら付き合うでしょ??普通に!!」
「ヒロはそう言う奴なんだよ」
「あはは」
珍しく松田も班長も2人で呼び出しを喰らっていて、俺はヒロゼロコンビと過ごしていた、自由時間。
入校後、缶詰の期間が終わって初めての休日、紹介したい相手がいるという諸伏に、俺たち4人は付き添ってテーマパークに来ていた。
そこで会ったのが。
一眼見て諸伏と彼女がお互いが思い合っていることに気づいた。
彼女がお手洗いに行っているタイミングで、関係性を問えば告白の返事を保留中だと言われた。
…正直、バカだと思った。
側から見たって、
諸伏はどうやったって彼女が好きだと言うことがダダ漏れしてるのに、って。
まぁ、諸伏のバックボーンを聞いた時、分からなくも無いと思ったけど。
にしては、
やっと好きって言ったのに関係に名前をつけないなんてと、他人事ながら彼女に同情してしまった。
「なんでだよ、ちゃん、あんなにヒロの旦那のこと思ってるのに。
せつねぇよ、切なすぎるよ」
「は、…オレのために我慢してくれてる。
…けど、怖いんだ。好きってやっと言えたけど、オレたちの関係に名前をつけた時、そばにいられなくなったらどうしようって。
卒業するまでは、どこに配属されるかもわからないだろ?
だから、決まったらちゃんと言うって」
運命なんてやつは、そんなもんだ。