第5章 ご
『俺らの仕事だって危険だ。けど、それ以上に、ゼロは…』
「萩原みたいなこと言うんだな。ブレーキを持たないお前が」
『当たり前だろ、諸伏の忘れ形見みたいなもんなんだから』
松田の言葉を聞きながら、の髪を透く。
『教場を卒業しても、場所が違くても、俺らが集まる理由は、1番はがいるからだろ?お前が言ったんじゃねぇか、どんなことしてでも護りたいって』
ヒロを止められなかったのは、俺だ。
だから、だからこそ、ヒロに代わって彼女を引き止めなきゃいけない。
『だから、お前が居られない間俺らも気にかけるって話だったじゃねーか』
引き止めるためにも、ちゃんと思い出してもらわなきゃいけないんだ。
彼女自身が生きてると言うことを。
「……このままでいいと思ったさ。
でも、今日初めて目の当たりにしたんだ。
松田たちから話は聞いていたけど、俺はしばらく連絡取れてなかったし。
…あのままじゃ、は1人で歩くことすら難しくなるんじゃないかって。
多少荒療治であっても、今なんじゃないかって」
彼女の髪を透いた手をそっと下ろす。
そこでぎゅっと拳を握った。
『…お前が頭硬いのは知ってたけどよ、これだけは肝に銘じておけよ。
もう一度、なんてことがあったら、は絶対。今度こそ二度と1人で立てなくなるぞ』
「分かってるさ」
『お前のところにが行くっつーなら、俺らはサポートしにくくなるんだぞ?』
「あぁ…」
『…納得いかねぇ』
ダンっと壁を殴るような蹴るような音がする。
八つ当たりはアイツの悪い癖だ。
「おい、器物損壊でつかまるぞ」
『知るかよ……って、他の奴らには?』
「言ってない」
『…自分の口で言えよ?俺は口ださねぇからな。フォローもしねぇ』
「あぁ」
『万が一なんてことになったら、絶対ぇ許さねぇ。
が泣くことはもちろん、泣けなくなるっつーのも、絶対ぇ許さねぇから。あぁ、それから、の働いてる喫茶店俺たちにも教えろ。そしたら、認めてやる』
「っ、」
電話の向こうで、ニヤッと笑う松田が容易に想像出来てしまった。
「………お前らのことも、巻き込むことになるかもしれないんだぞ」
『上等だよ』