第5章 ご
風見が帰った後部屋に戻ると音がしなくて、柄にもなく変に焦った。
「って、なんだよ。寝てたのか」
ソファに寄りかかり、膝にハロを乗せたまま眠る彼女は、実年齢よりもだいぶ幼く見える。
俺が言うのもなんだけど…。
寝顔だとこんなに穏やかなのに。
彼女にできた大きな心の傷は、まだ瘡蓋には成れないらしい。
「そりゃそうだよな、」
俺だって、慣れないんだから。
テーブルの上に置いてあった彼女の携帯が鳴る。
"松田君"と表示されたそれに、知る仲ということもあり出る。
さぞ驚くことだろう。
『もしもし、俺だけどよぉ。、お前どこ行ったんだよ。飯一緒に食おうと思って、買って来たのによぉ』
「悪い松田。俺だ」
『あ?…って、なんだよゼロか。俺お前の電話にかけた覚えないんだけどよ』
「そりゃそうだろうな。の携帯で出たから」
『だよな。なんだよ、二人今一緒にいんのか?合流していいか?』
「いいけど」
『いいのかよ』
「それは良いとして。
松田、俺…と一緒になることに決めたから」
『…は?』
「パートナーとして、支えることにしたから」
ガタガタっと、電話の向こうで音がする。
『は?!…え、は?!』
「その方が手っ取り早く、立ち直せるかなって」
『…っ、』
「もう、流石に見てられないだろ。30歳を目前にしてさ、これから先もだけが取り残されて、色のない世界で生きてくしかないなんてさ」
『それはそう、だけどよ…なに急に焦ってんだよ』
「急じゃないさ、ずっと考えてた。アイツが、…ヒロがいなくなって、俺がそれを最初に知らせたの、連中でも上司でもなく、だったんだよ」
俺が、の時を止めたんだ。
便りがないのは元気な証拠とは、よく言ったものだ。
ヒロのことを告げた時、そのことを痛感した。
どうとでもできた筈だ。
今の俺になら…。
『なんでこのタイミングなんだよ』
「が感情を取り戻して来たからだよ。聞いただろ?色が分かったって言うやつ」
『ゼロ、分かってるか?だからこそゆっくりと」
松田の言葉を遮るように言う。
「だからこそ、ゆっくりじゃダメなんだよ」
『…ならさ、お前の仕事言ってみろよ』