第5章 ご
降谷君はどこまでも優しかった。
1人になるのが嫌で、家に帰りたくないと呟けば、自分のセーフハウスに呼んで、あたたかい梅昆布茶を淹れてくれた。
ホッとする匂いだった。
「味が分からなくても、体にはいいから」
自分は珈琲を飲むくせに、降谷くんは私を優しく扱う。
困ったように笑って、私の正面に座った。
「これからのことを考えようか」
これからのことなんて、考えたくなかった。
「必要だろ?アイツらへの報告も含めてさ」
「そっか、…」
ゆっくりと、飲む。
「いいか、」
降谷君が凛とした声で言う。
「俺はヒロと違って優しくないから、多少荒療治になるかもしれない」
「うん、」
「…でも、ずっと側にいるから」
「うん」
満足げに笑って、私の髪を撫でる。
「そうだ、」
「ん?」
「、君犬は大丈夫だったか?」
「犬?」
「そう、」
「うん。平気だよ、好きだよ」
「そっか、よかった。もうすぐ」
降谷君の話を遮って、チャイムが鳴る。
「出なくていいの?」
「あぁ。鍵持ってるしな」
ガチャガチャと、鍵が開く音がする。
爪が木を叩く音がする。
人の足音も。
「風見、すまないな」
「いえ、…で、そちらが?」
「あぁ、だ。、こっちは俺の部下の風見」
初めて見る男性。
眼鏡の少し怖そうな人。
「よろしくお願いします、さん」
「よろしくお願いします、と申します」
言われるがまま、挨拶する。
「俺が仕事で手が離せない時、何かあったら風見に言ってくれ。
それから、こっちはハロ」
アンッ
と、まんまるの瞳でハロが私を見る。
「降谷君」
「、ハロは俺が飼ってるんだ。かわいいだろ?」
ハロを持ち上げて、私の方へと差し出す。
アンッ
「ハロもによろしくって言ってる」
「ふ、っ、よろしくね、ハロちゃん」
「ハロはオスだ」
「そっか、抱っこ私もできるかな?」
「抱っこしてみるか?」
「うん」
降谷君から受け取る。
ハロは少し重くて、あったかい。
「たまにに、ハロのことお願いしたいんだ」