第4章 よん
「提案なんだけどさ、よかったら…」
降谷くんの声に耳を傾ける。
「俺は、アイツになれないけど。…それでも少し、が生きやすくなるためにもさ、」
「…」
「が1人で立てるようになるまで、俺に支えさせてくれないかな?
…ゆっくりでいいから、俺と生きてみないか?」
コクンとうなづく。
「ありがとう」
降谷くんは、私に優しい。
他所から見て、こんな関係はきっと歪なんでしょう?
傷の舐め合いみたいにして、優しくしてくれる降谷くんの言葉に甘えて、情けない私はそれを受け入れて。
降谷くんは私がほしいものを、迷わずにくれる。
「…わたし、降谷くんといたら普通になれるかな」
「は、普通にはなれないかもしれない」
「そう、」
「だって、俺たちの特別だから」
ぎゅっと腕が強くなる。
「特別だから、離してやらない」
降谷くんの、言葉が傷を塞ぐみたいに、私を包む。
「そばにいてくれ、」
「うん」
恐る恐る、私も降谷くんに腕を回す。
今日から、降谷くんのために生きよう。
降谷くんを思って生きよう。
優しさをくれる降谷くんに、ちゃんと返したいって思ったから。
「降谷くん、すきだよ」
私、この時、自分のことしか見えてなかった。
降谷くんが強く抱きしめた理由も、本当はちゃんと分かってなかった。
「…俺もだよ、」
だから、ごめんね。
いつだって私は、自分のことばかりで。
私のすきって言葉で、どれだけ降谷くんを苦しめたんだろう。
「…ちゃんと、息できそう。ふぅ、っ、目がヒリヒリするよ」
ゆっくりと降谷くんが離れる。
「うさぎみたいに、目が真っ赤になってるよ」
大きな手が私の頬に触れる。
降谷くんの指が、私の目元を撫でる。
壊れ物を触るように。
「、目を瞑って」
「うん、」
ゆっくりと目を伏せる。
変わりたい。
変われない。
キスをしたら変わってしまうことくらい、分かってた。
変わってもいいのかな、
『!!』
いつか交差点で聞こえたみたいに。
ヒロの声が響く。
ゆっくりと目を開けると、唇が触れる前に降谷くんも目を開けて。
キスはせずに、コツンと熱を確認するように額が重なる。