第4章 よん
3人をボックス席に案内し、コナン君も移るというので同じくオレンジジュースを運んだのは少し前のこと。
安室さんが、盛り付けるのをみてると、ふいに視線が合う。
「さん、これ蘭さん達のテーブルです。お願いできますか?」
「わかりました」
うなづいて、受け取る。
「お待たせしました。半熟ケーキです」
ことっとそれぞれの前にプレートを置く。
「蘭が言ってた人?」
カチューシャをした女の子が、蘭ちゃんに耳打ちをしている間に、黒髪のかなりボーイッシュな子がニッコリと八重歯を見せ元気よく言ってくる。
「ボクは、世良真澄!よろしくな!!蘭くんから聞いてるよ!」
「初めまして、です、真澄ちゃんよろしくね」
努めて、笑顔に見えるよう口角を上げる。
「鈴木園子よ。よろしくね、さん」
「園子ちゃんも、よろしくね」
制服を着た、彼女達が眩しい。
「3人とも、学校お疲れ様。どうぞ、ごゆっくりしていってね」
「ありがとうございます」
不自然にならないよう、口角を落とさず目を細める。
目が眩まないように、わざと視線をはずして、逃げるようにカウンターへと入る。
「さん、」
なんで、安室さんがそんな顔して笑うの?
「…そうだ。梓さん、卵と牛乳切れそうなので買い物行ってきてもいいですか?」
いつの間にか後ろにいた梓さんに、安室さんが声をかける。
「あぁ!安室さんそれなら、他にもお願いしたいものがあるので、メモしますね!
あと、そろそろ落ち着く時間なので、さんも良かったら安室さんに買い方教えてもらってください」
「そうですね、じゃあ、さん。用意して、先車行っててもらえます?」
ポケットから鍵を取り出し、私に手渡す。
「わかりました」
と、それを受け取り一足先に駐車場に向かう。
街の音が、頭に響く。
賑やかに遊ぶ子供達の声、楽しそうに話す学生達の声、電話する大人の声。
バイクの音、車の音、電車の音。
歩くスピードが落ちる。
無理やりに止めた吐き気が蘇る。
「うっ、」
こんな姿を見られたくなくて、少し影に入る。
眩暈にたってられなくなって、しゃがむ。
苦しくて、涙が溢れる。