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夕刻、貴方の影を探す

第4章 よん


 「みんな、喜ぶな」
 「そうかな?」
 「そうだよ、松田たちにはやらないのか?」
 「考えてなかった。本のお礼にって思ってたから」
 「そっか」

 袋をキュッと締め直して、安室さんが笑う。

 「なら、遠慮なく。俺が独り占めして、あいつらに見せつけてやろう」
 「誰も悔しがらないでしょ」
 「グループライン見とけ笑あいつらの悔しがる顔が浮かぶよ、荒れるよ、きっと」
 「安室さん悪い顔してる」
 「班長になら分けてやってもいいけど、萩松は昨日の仕返し。…っと、そろそろ店開けないとな。梓さんももうすぐ来ますしね。
 ありがとう、あとは、ゆっくり食べるからな」

 ぽんぽんと頭をなで、ロッカールームにもどる安室さんに続く。

 「今日は私がお外掃きますね」
 「お願いします」

 コナンくんが降りてきたら伝えよう。

 さっさと店の前を履いていると、聞こえてきた足音。
 蘭ちゃんとコナンくん2人分の足音。

 「おはよう!さん」
 「おはようございます、さん。昨日もコナンくんお世話になったみたいで、ありがとうございました」
 「おはようございます、蘭ちゃんコナンくん。そんなそんな、むしろ私がお世話になった感じで。
 本も沢山借りてしまったし。コナンくん、本半分読んだの持ってきたから学校帰ったら寄ってくれる?」
 「もう読んだの?!」
 「うん、一気に読めちゃったよ。すごく面白かった。後でお話ししよーね」
 「そんな、コナンくんばっかりずるいです、私とも仲良くしてください」

 か、かわええ。蘭ちゃんかわええ。

 「もちろんだよ!蘭ちゃんもお話ししようね!」
 「今日、ポアロに友達と顔出しますね!」
 「うん!お待ちしてます!」

 2人の背中を見送って掃き掃除も終えて、ポアロの中に戻る。

 「ありがとうございます、さん」

 ふんわりと笑った安室さんに、私も同じようにして笑って返す。

 カランコロンと鈴の音が、来客を知らせる。

 「いらっしゃいませ!」

 席に案内して、注文を受けて、その繰り返し。

 忙しいお昼時を抜ければあっという間に客足もやんで、私達もそれぞれお昼を食べて。

 ものすごく平和に1日が過ぎようとしている。

 こんな毎日が続くのであれば続いていたならば、ヒロは…。
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