第4章 よん
焼き上がるまでの間、どうせ持ってくならラッピングでもしようと、探す。
ここの引き出しだったかな…。
「…あった」
バレンタインや、クリスマス、誕生日、記念日それでなくてもラッピングするための材料が好きで、よく集めてた私。
『また買ったの』
何でもない時に買うと困ったように笑うヒロ。
こんなとこまで思い出しかないのか…。
毎日来てたわけじゃないのに、だからこそ鮮明に覚えてる。
「決めた、これにしよ」
タイミングよく焼き上がりを知らせる。
「ん、いい匂い」
美味しくできてるかわからないから、安室さんに味見してもらおう。
美味しいって言われたら、みんなに渡そう。
…なんて、警察官である彼をこんなことに使うのは私くらいだろうから。
シールを貼って、きゅっとリボンをしめる。
「上出来」
…見た目は。
ケータイのアラームが、家を出る時間を知らせる。
びっくりするくらい、調子がいい日だ。
忘れないように、読み終わった本と出来上がったお菓子を紙袋にいれて、持つ。
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「おはようございます、さん。早いですね」
「安室さんこそ、まだ始業の30分前ですよ」
「いえ、ボクも今来たところなんですよ…ところでその手にあるのは?」
「昨日、帰ってから読み終わった本です。後半分くらいあるんですけど、すごく面白くて。コナンくんに早く感想伝えたいんです」
「そうですか、」
安室さんの前にずいっと小袋を差し出す。
「なんですか?」
「クッキーです」
「見ればわかります」
「お礼に渡したいけど、私、味がわからないから。安室さんにお願いできないかなって…」
「が、作ったのか?」
「うん、」
「そっか。うん、ありがとう」
カウンター越しにいた安室さんが、私に座るよう促し、その隣に安室さんも座った。
ラッピングのリボンを解く、安室さん。
封を開けて手を止めた。
「そうだ、私も一口食べたほうがいいよね」
「…いや、大丈夫だ。いただきます」
サクッと音がする。
「…」
何も言わない安室さんに、少しだけ不安を覚える。
砂糖と塩、間違えるなんてミスしてないはずだし、大丈夫だと思うけど。
「…うまいよ、大丈夫。ちゃんとうまいよ」