第1章 いち
「ハギは聞き込みにならねぇから、ダメだろ」
「どう言う意味だよ、陣平ちゃん」
「萩原君、人タラシだもんね。たしかに」
「ちゃんまで、そりゃないぜ。ま、今の仕事の方が性に合ってるから俺も辞める気ねぇけどな」
なんて言ってるうちに、チャイムが鳴ってまた客人を知らせる。
「ヒ…班長さんかな。降谷君は夜中って言ってたもんね、」
「俺でてくるよ、」
「ありがとう、萩原君。私、班長さんの分珈琲いれておくね」
「はいはーい、俺もおかわりちょーだい」
「うんっ、松田君は?」
「まだ残ってる」
「そっか、」
もう一度キッチンに立ったところで、玄関から凄い声量が聞こえる。
「!!大丈夫か!?…って、なんだ萩原かよ」
こっちまで聞こえるなんて、相当心配して来てくれたんだろう。
「班長の声ヤベェな」
「心配してくれる人がいるって、嬉しいね」
「そーか?」
「うん。こうなったら降谷君の心配も心して受けようと思うもんね。ちなみに松田君と萩原君、全く同じ心配の仕方してた。さすがだね」
「はは、そーかよ」
「うん」
ドアが開いて、客人がなんとも言えない表情で入ってくる。
「よー、班長」
「来てくれてありがとう、班長さん」
「ナタリーのやつも心配してたよ、コレ。ナタリーから」
「わ、ありがとう。ナタリーさんにも心配かけちゃって悪いことしたな」
「お前は悪くないだろ」
「そーだね、悪いのは…全部ヒロだね。夕飯みんなどうする?なんか作ろっか?」
「いや、お前今日はゆっくり休め。俺らが居たら、泣くに泣けねぇだろ」
「陣平ちゃん…、だね。俺も今日は大丈夫。ちゃん、いつでも頼ってよ。なんでもするからさ」
「そっか、お気遣いありがとう。班長さんは?」
「俺も帰る。ゼロも来るんだろ?」
「うん、そう聞いたけど?」
「そっか、なら…色々ちゃんと聞いとけ。お前になら、ちゃんと言ってくれるだろうから」
「言えないお仕事であっても?」
「それでも聞いとけ。アイツ、今しか言わねぇと思うから」
「わかった」
班長さんの目があまりにも真剣に私を捕らえたから、そう答えたけど、どうかな。
いくらヒロの最期であっても、降谷君は言ってくれない気がする。
降谷君を困らせてしまう気がする。