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夕刻、貴方の影を探す

第1章 いち


 「お、嬉しいこと言ってくれるね。ヒロはお友達認定してくれるまで、しばらくかかったよ。降谷君のことは一回で認めたのにって、たまに嫉妬してた」
 「はは、ヒロっぽいな」
 「うん、でしょ」

 傾けた珈琲カップが空になって、ちょうどよく体が温まる。

 「…2人は、降谷君とかによく会ってたりするの?」
 「いんや、ぜんぜんよ。メッセージに既読はつくから、辛うじて見てるんだなって思うくらいで」
 「そーそ、ハギの事件あったろ?釘刺す意味であれからあの日に、1年に1回集まるって約束して、でも、ここ二、三年はあいつら顔すら出してなかったしな」
 「俺の事件って、」
 「防護服着なかったやつ?」
 「そーそ」
 「反省して今ではちゃんと着てるっぽいけどな」
 「言っても、陣平ちゃんだって危なかったろ」
 「俺はどっちも止めたからいいんだよ、ギリだったけどな」

 向き合いながら言い合う2人を見ながら、ほんとはどうしてヒロだけが助からなかったんだろうって思った。

 「犯人、まだ捕まってないんだっけ、」
 「ぜってぇ、俺がとっ捕まえてやる」
 「あんまり、生き急がないでよ。班長さんに手綱ちゃんと握ってて貰わないとね?」
 「てきびしーな」
 「そういや、お前も班長呼びなんだな」

 何げなく言った松田君に、少しだけ昔のことを思い出す。

 「うん、ヒロがそう呼んでたのもあるんだけどね」

 ヒロがよく、警察学校の話をしてくれた。
 一緒になって、降谷君も教えてくれた。

 お風呂掃除の話、みんなが一丸となってヒロの事件解決してくれたって聞いた時は、感謝せずにはいられなかった。

 「私しばらくヒロの上司だと思ってて、伊達さんって呼んでたのね。
 しばらくしてから、降谷君にどうして俺達と伊達と敬称違うんだ?同学年なのにって、言われたことがあって」

 それを言われた時の衝撃とか、

 降谷君のキョトン顔とか、

 ヒロの少し悪戯に笑った顔とか、今でも普通に思い出せる。

 ヒロは多分、私が班長さんにそう思ってたこと知ってた。
 
 「私びっくりしちゃって、そこから伊達君って呼ぼうって思ったんだけどやっぱり慣れなくて、その時から班長さんって呼んでる」
 「確かに、急に班長呼びになったもんな」
 「萩原くん、さすがよく見てるね。刑事さんもむいてるんじゃない?」
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