第4章 よん
何も言わずに歩き続けるヒロ。
やっと止まったなって思ったのは、ヒロが跨線橋を下り切った後。
…夕陽がもう半分以上暗闇に飲まれてる。
「やっと止まった。ヒロ、1時間も待っててくれてたの?」
『今日、部活早く終わったんだ』
「声、かけてくれればよかったのに」
『かけたよ、かけたけど。…あんなに楽しそうな顔して読んでるの、邪魔したくなかったんだ』
「ヒロ…」
ヒロの顔が赤く見えるのは、夕陽のせい?
それとも…
『って、あぶない!』
ドンっと、後ろからの衝撃で、体が浮く。
私にぶつかり脇を通り過ぎた影は、謝りもせずかけて行った。
まずい、このままじゃっと、そう思った時…。
フワッと制汗剤の香りに包まれる。
ヒロの匂いだった。
『危なかったね。大丈夫?』
ドキドキと心臓が早い。
「…」
『…』
ゆっくりと離れる熱に、少し寂しさを覚える。
先ほどとは打って変わって、心配そうに眉を寄せて私の顔を覗き込むヒロ。
『どこか痛くした?』
ううんと、首を振る。
『に怪我がなくてよかった』
優しいヒロ。
ヒロの笑顔が夕暮れと共に見えなくなる。
『今度こそ、帰ろ』
危ないからと、なぜか繋がれた手。
ヒロはその行為に何も思ってなかったのかもしれないけど。
その指の長さも、手のひらの大きさも私をドキドキさせるのには十分すぎるくらいで。
「いつまで繋ぐの?」
『は、俺に手繋がれるの嫌?』
「そんなわけない!!」
間髪入れずに言った私にクスッと笑った彼。
この暗さでもどんな顔してるのか、すぐにわかった。
『そんな必死にならなくてもいいのに』
なるよ、
ヒロのことだったら。
「必死になるよ。だって」
『ごめんね、』
私と繋いでない方の手で、私の口を抑えたヒロ。
『答えられないから、言わないでくれないか?』
「…」
切なげに笑っているのが、街灯のせいでよくわかってしまった。
「ヒロ」
口元からパッと離れたヒロの手。
『の手、昔より小さくなった?』
「…ヒロがおおきくなったんだよ」
『それもそっか』
ねぇ、ヒロ。
…いつこの想いを受け止めてくれるの?