第4章 よん
『本?どうした?熱でもあるのか?』
失礼な降谷くんに、もう一度口を膨らます。
「ヒロとおんなじこと言う」
『ははっ、だって君が本なんてやっぱり珍しいから。どんな心変わり?』
「図書委員会に入ったから、読んでおこうと思って」
『へぇ。関心だな』
「と言うか2人とも、部活いいの?」
『そうだヒロ、早く行かないと』
『じゃあ、また明日ね』
「うん、ばいばい。部活がんばってね」
『読書もいいけど、ほどほどに帰れよ。暗くなるんだから』
「わかってるよ、ありがとう」
降谷くんの話半分で、またページを捲る。
オムニバス形式の本で、読み進めるのが楽しい。
漫画とは違って、想像で物語が進んでく。
…そう、思い出した。
本当は、図書委員会になったのだって、動機不純だった。
本人から直接聞いたことはない、女の子同士の情報網で噂程度に聞いた話。
ヒロが、男子との会話で言ってたらしい。
好きなタイプは読書家な子って。
それなら不自然じゃないように、図書委員会に入った私は当時、今よりもっと行動的だった。
「んーっ、面白かった」
『』
「っ!!びっくりした、ヒロ。何してんの?」
『何してんの、はこっちのセリフだよ。ゼロも言ってたのに』
「え、…あ」
あたりはすっかり夕陽に変わりかけていて、もう少し読み終わるのが遅かったら暗くなっていたはずだ。
「ヒロ、降谷くんは?」
『先に帰したよ。ほら、帰ろ。』
「部活は?」
『とっくに終わったって。そろそろ完全下校の時間だよ、急がないと先生に怒られる』
「いつ終わったの?」
『さっき』
「さっきって?」
『いいから、早く立って』
ぐいっと引かれた腕。
見た目の割にしっかりとした力。
「お前らいつまで残ってるんだ」
『先生』
「諸伏、お前1時間くらい前に降谷と帰ったんじゃなかったのか?」
『た、たまたまです』
「まぁいいが、気をつけて帰れよ」
『はい、さようなら』
「さよなら、…って、ヒロ!」
先生の言葉に、ヒロの歩幅を段々と広くなって、スピードも上がる。
「早い、早いって」
上靴を適当にしまいバタバタと靴を履いて、昇降口を出る。
「ヒロ、待って」