• テキストサイズ

夕刻、貴方の影を探す

第4章 よん


 「へぇ、じゃあちゃん喫茶店で働くんだ」
 「うん」
 「ま、良かったんじゃねぇの?」
 「うん」

 個室に入り、3人で乾杯をする。
 ちびちびと口に含んだお酒。

 スコッチウイスキー。

 「…2人にね、報告というか。大したことは無いんだけど、」

 なんとなく可愛い気がした名前に惹かれて、頼んだけど少し度数が強い。
 
 「うん?」
 「なんだよ、」

 2人はいつも通り生ビールを傾けている。
 なんとなく、今日のこと聞いて欲しくて。

 「今日ね、なんていうか久しぶりに夕陽の色がわかって。
 オレンジ色で、すごく綺麗で。なんか、凄くすごく嬉しくて、すごく綺麗だったから、なんていうか色々思い出して。
 みんなに会いたくなったの、」

 幼いかもしれないけど、たったそれだけが嬉しくて、共有したくて。
 この2人にっていうのは、少し贅沢かもしれないけど。

 「じゃあ、もう色々識別できるってことか?」
 「ううん、あの一瞬だけだったから、多分違うと思う。
 でも、いいきっかけになればいいなって初めて思えたんだ」

 やっぱり、強いお酒。

 「そーかよ」

 松田君が優しく笑ってくれた気がする。

 「じゃあ、今日は記念日だな。乾杯しよーぜ!」

 いぇーいっと萩原君がジャッキをかかげる。
 そんな大したことじゃないのに。

ーー


 程よく酔いが回ってきた頃、個室のドアがノックされる。

 「はーい」

 ドアを開けると、そこには…

 「2人とももう出来上がってるじゃ無いか」

 降谷君、来ないって言ったのに。

 「んぁあ?ゼロじゃねーか」
 「ほんとだぁ、なんでぇ?」

 「班長が来られないって言うメッセージ見たからな。にお前らの面倒かけるわけにはいかないだろ?」

 そう言って後ろ手にドアを閉め、会いてる席に座った降谷君。
 どっちの名前で呼んだらいいんだろう。

 「ふ、…え、あむ、えっと、」
 「いつも通りでいいよ、こいつらの前だし。個室だしな」

 わしゃっと頭を撫でられる。

 「降谷君、お仕事は?」
 「今日は終わらせて来た。なにより、君の、…のお願いだしな」
 「えへへ、ありがと」
 「うん。はは、その腑抜けた顔見たらお腹すいたよ」
 「いっぱい食べて。萩原くんも松田君もお酒飲むだけなんだもん」
/ 95ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp