• テキストサイズ

夕刻、貴方の影を探す

第4章 よん


 「しつこいようだけど…萩原達には俺のこと、バレるまでは内密に」
 「うん」

 ポアロでの勤務を終えて、安室さんこと降谷君は別件の仕事があるらしく、本当に彼らと会わず私だけを下ろして夜の街に消えた。

 ポンっと叩かれた肩にドキッとして振り向く。
 
 「やっほー、ちゃんからのお誘いなんて珍しいね、俺、嬉しすぎて秒速で仕事終わらせてきたよっ
 …って、すごい本の量だね?」
 「萩原君はいつも1番に来てくれるね」

 よいしょっと本を持ち直す。

 「まぁ、俺のは特殊だし。それだけ平和ってこった」

 まぁ確かに、爆弾処理だもんね。萩原君。

 「うん、そうだね」
 「班長は来られないけど、松田は終わり次第来るってさ」
 「急に誘っちゃったから」

 松田君も班長さんも最近だいぶ忙しくしているらしい。

 「それにしても、どうしたの?そんなに本持って」
 「本、気になる?」
 「うん。ちょっと貸して?」

 と、何も思わず袋を渡すとそのまま持ってくれるらしい。

 「ありがとう、萩原君。今日、たまたま小学生のお友達ができてね。借りたんだ。重かったんだけど、お家に戻るより待ち合わせ場所の方が近かったから、そのまま持ってきちゃったの。
 工藤優作さんって作家さん知ってる?」
 「あぁ、ナイトバロンの?」
 「そうそう」
 「元女優の奥さん綺麗だよなぁ」

 なんというか、萩原君らしい。

 「そうだね、まぁそれで、その方の遠い親戚だったみたいで。
 ホームズ好きな子で、読んでみるって言ったらそれ関連の本も貸してくれたんだ」
 「へぇ、凄い子だな」
 「うん、凄いよね。小学校1年生なんだって」
 「俺らその時は、本なんか読まないで解体に明け暮れてたな」
 「それはそれで凄いけどね」
 「陣平ちゃんなんて、携帯バラしてたもんな」

 なんて話してるうちに、松田君が合流する。

 「なんだよ、俺の話?」
 「そうそう、」
 「陣平ちゃんが携帯バラした話してた」
 「何年前だよ」
 「そういえば、私も一回バラされたことあったな」
 「う…。つーかなんだよ、急に呼び出して。せっかく来てやったのにつめてぇやつ」
 「えへへ、ごめんごめん。予約してあるから行こ?萩原くん、本ありがとう。私持つよ」
 「萩原が読むのか?」
 「俺じゃねーよ、ちゃん」


/ 95ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp