第3章 さん
「…さっき、恋人って言ったけど少し見栄を張りました。」
ヒロは、私を1番の友達って言ったけど、
恋人って認めてくれたことはなくて、
好きって言ったのも私から最初で。
大好きで大好きで、仕方ないって伝えてもヒロは笑うだけで。
「高校の時、進路が別になってもう会えなくなるからって最後の告白をしたんです」
その時初めてヒロが受け入れてくれて。
「オレの気持ちは言えないけど、待っててほしい」って。
それから大学生になって、会えなくなると思ったのに、ヒロは昔よりも積極的に私と会おうとしてくれて、
なんとなくいい雰囲気になったりして、
「だけどやっぱりヒロは言葉をくれなくて、ある時、目的がひと段落ついたからって、初めて気持ちを伝えてくれたんです。
好きだって、」
隣で珈琲を啜る音がする。
「卒業したら付き合おうって、言ったのはヒロだったのに。
ずーっとはぐらかされて、たった一回の好きに縋って、待ってるなんて馬鹿みたいですよね。
卒業しても、関係はかわらなかった。
私はヒロを求めたけど、ヒロはそんなことなかった。
自分でいなくなることをきめて、私はそんな彼の未練にもなれないんだって、思って」
自分で言って悲しくなる。
止まったはずの涙がまた溢れる。
「わたし、ひろのなんだったんだろ…。」
「…」
「ヒロがいなくなって、今まで泣いたことなかったのに、今更こんなに泣くなんて、おかしいですよね」