第2章 に
ヒロがいなくなって数年、私は29歳になっていた。
降谷君はあの日泊まってから、一度も連絡はもちろん、家にも来なかった。
他の3人はたまに顔を出す。
ヒロの最後も、ヒロを撃ち抜いた弾のことも私は3人に話していない。
ーー
ー
「お姉さん、まって!」
すれ違いざま声をかけられて、振り向くと小さな子供が1人。
「これ、落としたよ」
受け取ったそれは、ヒロの形見を入れた小さな巾着。
「何が入ってるの?」
「心臓」
「え?」
「わたしの、大切なもの。拾ってくれてありがとうね」
目線を合わせて、伝える。
少し遠くから、その少年を呼ぶ声がした。
「コナン君、置いてっちゃうわよー!」
「はーい、蘭ねぇちゃん!いまいく!」
振り返って言うと、私に向き直り、
「今度は落とさないようにね」
とニッコリ笑う。
「うん、ありがとう」
その出会いが、私の運命を変えた。