第2章 第七師団
1907年?
1907年ってなに?
パラパラパラと頭の中の歴史の教科書を開いていく。
日本史は比較的得意な方なのだ。
確か1894年に日清戦争があって、1904年が日露戦争で。
1905年にポーツマス条約が調印されたんだよね。
てことは。
「日露戦争後ってこと⁉︎明治時代⁉︎うっそだ〜!!」
年上相手にめちゃくちゃタメ口になってしまったが許して欲しい。
だってそんな冗談言われたら、誰だって私と同じリアクションになるでしょ。
「嘘じゃない」
ケラケラと笑う私に、彼は無表情でそう返した。
全く感情の見えない真っ暗な瞳に、背筋がゾクッと寒くなる。
「でも、私・・・2023年にいたんですよ?2023年の東京に。そしたらいきなり強制瞬間移動させられて、小樽の雪山に飛ばされて・・・」
あまりに動揺し過ぎて、自分がどんなにおかしなことを言っているのかもうわからなくなっていた。
「その時に時間も飛ばされたんじゃないのか。この明治の時代に」
考えもしなかったことを言われ、私の頭はますます混乱していく。もうすぐ煙を出してショートしてしまいそうだ。
まさかそんな。
場所移動だけじゃなくて、時間移動までしたってこと?
私ってどんだけすごい能力を隠し持ってたわけ?
つまりだから、スマホの時計は止まったままで、電波も入らなくて。
つまり、元の時代への戻り方がわからない限り、家に帰れないってこと!!!!????
「ようやく分かったか」
ベッドに横たわる彼は、私が絶望に打ちひしがれるのとは裏腹に、フフンと得意げに鼻を鳴らした。
「この話は俺以外のヤツには絶対にするなよ。そのすまほとかいう機械も誰にも見せるな。いいな」
「え?なんで・・・」
家族も友達もいない時代。
事情を説明したら、一緒に帰る方法を探してくれる親切な人がいるかもしれないのに。もしかしたらすでに方法を知ってたり、私と同じ境遇の人も、万にひとついるかもしれない。
「お前は100年以上も先の情報や技術を持っている。そんなことがバレたら軍事利用されるだけじゃない。運が悪けりゃ最悪口封じで殺されるかもな」
「ころ・・・⁉︎」
「分かったら喋るなよ」と念を押され、私は両手で口を押さえてこくこくと頷いた。