第2章 第七師団
どれくらいたったのだろうか。
最早時間の感覚なんてなくなっていた。
長かったのか、短かったのか、それすらも判断できない。
宇佐美上等兵の口が離されると、待っていたとばかりに肺に空気を吸い込んだ。肩が激しく上下する。
「…はっ!何その顔」
私の顔を見た宇佐美上等兵が意地悪く笑った。
「犯してくれって顔、してるけど…?」
「そ…、そんな顔…はぁ…、して、ないです…」
口ではそう言っているけれど、実際自分がどんな顔をしているのか全くわからない。
ただ高熱を出した時のように、顔が熱くてなんだか意識が朦朧としていた。
キスって、こんなになるものだったっけ?
元々唇と唇が触れるだけのキスしか、ほとんど経験がないんだけど。
なんて言ったらいいんだろう。
こんなにも気持ちよくて、こんなにも頭が真っ白になっちゃうものだったんだ。
それとも宇佐美上等兵が特別上手いのかな?
そんなことをぽーっとする頭の片隅で考えながら、力が出なくて宇佐美上等兵の肩に寄りかかってしまう。
そんな私を見た宇佐美上等兵の嬉しそうなことと言ったら。
「…あー、その顔やばい。ゾクゾクする」
私の頬に優しく触れると、心底楽しそうに呟いた。
「お望み通り犯してあげるね、かおり」
「や…やめ…っ」
抵抗したくても力なんてこれっぽっちだって残っていない。
宇佐美上等兵の右手は、遠慮なんて言葉を知らないみたいに身体中を這い回っていく。
はぁはぁという、興奮した息遣いが近くで聞こえた。
抱きしめられる形のままひと通り身体を撫でられ、なんとか振り絞って耐えていたけどもう無理。
ガクン、という衝撃とともに身体が崩れ落ち、床にぺたりと座り込んでしまう。
なにが起きたのかと怪訝な様子で私を見下ろす宇佐美上等兵に、引き攣った声で状況を告げた。
「こ…、腰が抜けました…」
途端、宇佐美上等兵は声を出して笑い始めた。
「はっ…はははははっ!う、嘘でしょ…!かおり、お前面白すぎるんだけど…くくくっ」
えー…、大爆笑じゃないっすか…。
「はぁー…、さすがにその状態のヤツを抱く気にはなれないわ」
ひとしきり人の失態を嘲笑った後、宇佐美上等兵はそう言って、腰が抜けて動けない私を置き去りにして部屋を出ていった。
助かった…!
助かったけど、なんかめちゃくちゃ悔しい!