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ハタチの誕生日に明治時代にトリップした話

第2章 第七師団


誰もいない昼下がりの一室。
廊下からはざわざわと喧騒が聞こえる。

部屋の中は打って変わってしんと静まり返っていた。

そんな中で、依然として壁ドン体勢のまま見つめ合う宇佐美上等兵と私。

2人の間にはふわりと柔らかな風が通り過ぎた。


なんて言うとめちゃくちゃ乙女チックな感じですが、実際の空気は冷え切っていてお互いにメンチを切っている状態です。

「いい加減どいていただいてもいいですか?」

「僕にそんな態度とるとどうなるか、わかってないの?」

どれだけ私が威嚇しても、暖簾に腕押し糠に釘。どこ吹く風でニタニタとしながら煽ってくるから本当にタチが悪い。
性格悪すぎじゃないですか、この人。

だから私もついつい意地になってしまった。それがいけなかった。

軍人相手だと自分がどれだけ弱い立場なのか、少し前に思い知っていたはずなのに。それも2度も。
さらにはそのうちの1人が今目の前にいる男だというのに。

ここまで学習能力がないと、自分で自分が本気で心配になる。

「一体どうなるっていうんですか?」

売り言葉に買い言葉だった。それを私が言い終わるかどうかのタイミングで、両手でがしっと顔を捕まれる。
鼻先数センチの距離で、宇佐美上等兵はこれでもかと口角を上げてニヤついていた。こ、怖い!

「どうなるか、教えてあげるよ」

宇佐美上等兵はそう言って笑うと近かった距離をさらにつめた。上等兵の見開かれた瞳には、怯えた私が映っていた。

「んん…っ!?」

口を塞がれる。
キスをされたのだと気付くのに時間はかからなかった。

「…んふ…っ!」

抵抗して引き剥がそうにも力の差がありすぎて、首を振って逃げようにも両手で顔を押さえつけられていて、まったくもってどうにもならない。

段々と息が苦しくなってきて空気を求めて口を開けた。このチャンスを逃さないとばかりに舌が侵入してくる。

「ふぁ…!…んんっ!」

口の中で自由自在に動き回る舌に翻弄されて、徐々に身体から力が抜けていく。

宇佐美上等兵を引き剥がそうとしていた腕は抵抗をやめ、ただぎゅっと彼の袖を握っているだけだった。
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