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ハタチの誕生日に明治時代にトリップした話

第2章 第七師団


えっと…。
もしかして鯉登少尉同様、月島軍曹もチョロかったりするの?

普段は仕事一筋、女なんて一切興味ありませんみたいな顔をしているのに。
尾形さんが言っていた通り、軍人さんってみんなそうなの?

月島軍曹のあまりに予想外な反応に、無意識に見つめてしまっていた。
視線に気付いた軍曹はバツが悪そうに一度視線を逸らすと、顔を背けたまま言葉を発した。

「…すみません。少し驚いてしまって」

頬はまだ赤く染まっている。

いつもの月島軍曹からは想像もできないリアクションの数々に、私の心臓にズキュンとハートの矢が突き刺さった音がした。

こ、これはダメです…!このギャップはダメですって月島軍曹!

心の中で悶える自分を悟られないように、出来うる限りの平静を装って再度謝った。

「い、いえ…。こちらこそ本当にすみませんでした」

「かおりさんが謝ることではありません」

そう言ってこちらを向いた月島軍曹の表情はもういつものものに戻っていて、なんだかちょっぴり残念な気持ちになる。
もうちょっと見ていたかったのになぁ。

「かわいい月島さん…」

「かわいい…?」

しまったと 思った時には もう遅い
何かの標語で聞いたことがあるような言葉を思い浮かべながら、慌てて口を両手で抑える。
抑えたところで、出てしまった声がなかったことになることはないのだけれど。

ものすごく訝しげに眉根を寄せる月島軍曹に睨まれて、どう誤魔化そうかと思考はフル回転。

可愛いなんて言われるの、男の人は嫌だよね。
しかも日々鍛えている屈強な軍人さんが、令和のもやしみたいに弱そうな年下の女になんて。

でもでも!めちゃくちゃ可愛かったんだもん!照れた月島軍曹!
だからつい口に出ちゃったんだもん!私が悪いんじゃない!可愛すぎる軍曹が悪いんだ!

そんな私の葛藤など知る由もない月島軍曹はうむ…とひとつ唸ると、さらに大ダメージを与える一言を言い放った。

「可愛らしいのはかおりさんの方でしょう」

はい、会心の一撃です。クリティカルヒットです。

いつもと変わらない仏頂面のまま放たれるその攻撃が強すぎて、私は顔を真っ赤にしてそそくさとその場を去ることしか出来なかった。


お願いですから、これ以上月島沼に引きずり込まないでください…!
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